« 林田みかん | トップページ | 葉山で仕事 »

2010年2月16日 (火)

特撮=CG?

30歳より若い人達は、映画の「特撮=CG」というふうに思っているかもしれませんね。映画の特撮に本格的にCGが使われ始めたのは「ターミネーター2」や「ジュラシックパーク」の頃からです(もちろんそれ以前にもCGが使われた映画もありましたが、極めて実験的な利用に限定されています)。これらはもう20年近く前の映画ですから、物心ついたときから特撮にCGが使われていたことになるわけで、「特撮=CG」と考えるのは当然でしょう。なので、YouTubeとかを見ていると、昔の特撮映画のコメントに「CGがへぼい」「よくできたCGだ」なんてのがつけられてるんですね。僕から見ると非常に違和感があるのですが。

でも30歳以下の人でなくても、今見ると「これCGだよね」と勘違いするような映像もあります。その代表的なものが1978年の「スーパーマン(クリストファー・リーブ主演)」のオープニングです。

YouTube 映画「スーパーマン」オープニング

いかにもCGのような映像ですが、この映画が公開された1978年は、今で言うCGのようなものはこの世に存在しませんでした。ではどうやって作っているかと言うと、これは「スーパーマン」からさらに10年さかのぼって1968年に公開されたスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」で使われた特撮を応用したものです。「2001年~」のクライマックスで、「スターゲート」と呼ばれるシーンがあります(下記映像参照)。

この映像は、後に「未知との遭遇」や「ブレードランナー」の特撮を手がけることになるダグラス・トランブルが開発した「スリットスキャン」という技法によって作られたものです。これまた今の人が見たらCGだと思ってしまうような映像ですが、アポロが月に行く前に作られたような映画でCGが使われるはずがありません。

この映像を作るには、まずスリット状に切れ目を入れた黒い厚紙を用意します。そして裏側から色のついたライトを当て、カメラのシャッターを開放にしたまま厚紙を動かす、もしくはカメラそのものを移動させて撮影します。すると、シャッターを開いたままですから、フィルムにはスリットから漏れた光が移動した方向にストリーク状にぶれて撮影されます。これで1コマ分の映像ができあがります。あとは、カメラ(厚紙)の移動距離、方向、露出時間を少しずつ変えながら、同じように必要なコマ数だけ撮影すれば、スターゲートのような映像ができあがるわけです。

「スーパーマン」のオープニングはこの技術を応用したものです。文字部分をくり抜いた黒い厚紙を用意し、その後ろから青いライトを当てます。カメラはシャッターを開放にして、文字に向かって前進しながら撮影すれば、その文字がストリーク状にぶれて撮影され、あたかも厚みを持った3Dの文字のように見えるわけです。ただ、最終的にスムーズなアニメーションにするためには、コンピュータで制御されたモーションコントロールカメラを使います。モーションコントロールカメラは映画「スター・ウォーズ」のために特撮監督のジョン・ダイクストラが工業用ロボットの技術を応用して開発したカメラで、プログラミングした通りの動きを何度も繰り返すことが可能なカメラです。したがって、映像制作にコンピュータが使われているという意味ではCGであると言えなくもありません(今で言うCGとは全く違いますが)。

CG以前は特撮に関わる人々が、いかにして望む映像を作るか知恵を出し合ったもので、今のハリウッドのCG技術は、こういった伝統的な特撮技術の上に成り立っています。昔の特撮技術にこそ、効率良くCGを作る方法、本物らしく見えるCGを作るヒントがたくさん隠されていたりします。僕自身、小学生のころから特撮マニアで、特撮に関する本を読みまくってきたことが今の仕事に大きく役立っています。なので、若いCGアーティスト達にも、昔の特撮技術をよく研究してほしいと思いますね。

|

« 林田みかん | トップページ | 葉山で仕事 »

CGのこと」カテゴリの記事