CGアーティストが勉強すべきこと
先日のデジスタワークショップで、CGアーティストになるには何を勉強すれば良いかという質問を受けました。勉強すべきことはいろいろあるでしょうが、個人的に結構重要かなと思っているのは、昔の特撮技法について知ることです。今は特撮といえばほとんどCGでやってしまうことが多いのですが、CGの無かった時代はそれこそ、色々な人が知恵を出し合って、さまざまな技法を駆使して作られているわけです。ミニチュア、マット画、特殊メイク、オプチカル合成、スクリーンプロセス、コマ撮りアニメ・・・・あげていけばキリがないですが、ジョルジュ・メリエスあたりから始まってジョージ・ルーカスが頂点を極めるまでの技術の集大成ですね。そしてハリウッドの今のCG技術は、この伝統的な特撮技術の上に成り立っています。
僕が恐らく他の多くのCGアーティストと違うと自負できるのは、小学生の頃から特撮技法の本を読み漁り、ハリウッドの伝統的なさまざまな特撮の技法を頭の中にたたき込んでいることだと思っています。CG以前の特撮映画なら、これはこんなふうに撮っているというのはだいたいわかります。結局特撮というのはCGであれ他の技法であれ、最終的に「それっぽく」見えればいいわけです。そして伝統的な特撮は「それっぽく」見せる技術の宝庫です。こういう技術は、時間、予算はないけれどクォリティはそこそこ出したいというときに生きてきます。
CGアーティストにとって、表現手段としてCGしか知らないと必ず行き詰ります。特にスケジュールがない仕事では、時間のかかるレンダリングは使えません。多大な時間をかければCGだけでもリアルなものが作れますが、日本においてはスケジュール、予算に余裕のある仕事など無いに等しいわけです。したがって正攻法で作るのではなく、どこかで良い意味での「誤魔化し」や「手抜き」が必要になってきます。そういう場合に大いに役立つのが、昔からの特撮技法なのです。こんな簡単なことで本物っぽく見えるのかと驚くような技術がたくさんあります。それを知っているのと知らないのとでは大きな差がでます。
そこで伝統的な特撮技法を学ぶお勧めの本ですが、これはもうやはり一番いいのはCINEFEXですね。最近のはCGのことばかりになりましたが、昔のものを読んでみると良いでしょう。今は絶版なので、古本屋かオークションで出るのを購入するしかないですが。
ただ、内容はかなり高度なので、相当な特撮フリークの僕でも、当時は子供だったこともあり、最初は読みこなすのが困難でした。でも何冊か読み込んでいけば理解できるようになります。もう少し一般向けにやさしく特撮の解説をしているのは中子真治氏の「SFX映画」シリーズ(全3冊)でしょうか。まずこちらを読んでおいたほうがいいかもしれません。こちらも絶版なので、今は古本屋かオークション等で入手するしかありません。
そしてこれは言うまでもありませんが、本を読んだだけではダメで、ちゃんとその映画も見ないと、どんな映像について語っているのか実感できません。映画と本とセットで勉強しましょう。
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