« 秋晴れ | トップページ | 移り変わり »

2010年10月 3日 (日)

サービス業

CG制作と言えば何やらクリエイティブなもののように聞こえますが、趣味でやるのではなく、それを「仕事」としてしまった場合、クリエイティブだの映像制作だのといったこと以前に「サービス業」というより大きな枠組みに組み込まれることになります。つまり、最終的には「いかにより良いサービスを提供するか」というところに行くわけです。

恐らくCG制作に携わっている人、もしくはCGクリエーターを目指している人は、映像を作ることが好きだから、物を作ることが好きだからやっているという人がほとんどでしょう。かく言う僕もそうです。ただ、別に仕事があって、夜や休日に趣味でCGを作るような人はそれだけで良いのですが、プロの場合はちょっと事情が違ってきます。プロとしてCG制作をやる場合、必ずお客さんがいます。こんな映像を作ってくださいというクライアントがいて、それを作るわけです。クライアントにしてみれば彼らが望むものを、彼らが提示した料金と期間内に上げてくれれば良いわけで、作っている人間が物づくりが好きか、仕事を楽しんでいるかといったことはどうでもいいのです。

たとえば、今回はCGの制作がすごく楽しかった、自分の興味とも一致してやりがいがあり、制作そのものをとても楽しんだ、しかし出来上がった映像に対してクライアントはあまり満足していなさそうだという仕事があったとします。一方で制作中はあまり面白くなかった、面倒くさいことがいろいろあったし、休みも全然とれなかった、でも出来上がった映像にクライアントは大満足で、満面の笑みでお礼を言ってくれたという仕事があったとします。プロとして正しいのはどちらでしょう? これは当然後者になります。もちろん、やって面白く、クライアントも満足というのが一番幸せなのですが、なかなかそうもいかないのが現実です。

みなさんがお金を払って何かサービスを受けようとする場合、相手に何を求めますか? 業種によって様々でしょうが、つまるところ、何かしらの「喜び」「感動」「快感」を求めてお金を払うわけです。お金を払ってまで苦痛を受けようとする奇特な人はそういないですよね。自ら苦痛を求めるマゾヒストも、それが本人にとっては快感だから求めるのです(笑)。客としてサービスを受けるのに、サービスする側がそれを楽しんでやっているのか、苦しんでやっているのかは正直関知しませんし、知ったところでどうにかなるものではないでしょう。客の立場としては払ったお金の対価として自分に返ってくるものが全てです。また、家を建てるのに、施主の希望よりも自分の好きなデザインを優先させる建築家と、施主の希望をきちんと聞き入れて最善の提案をする建築家とでは、当然後者のほうが施主にとっては喜ばしいし、快感なわけです。自分のことを考えていてくれる、自分のためにこんなにしてくれるんだという感動が、次回またそのサービスを受けようという気にさせるのです。

結局CG制作も、仕事としてそれをやっている以上はこれと同じなんですね。CGを作る自分が面白いかどうかではないのです。できあがったものに対してクライアントがどう思うか、それが全てで、それを作る過程はどうでもいいのです。クライアントの望みどおり、もしくは望み以上のものを提供すれば、それは彼らにとって快感になります(その快感がどんなものかは、人それぞれでしょう。純粋に映像を楽しんだという快感かもしれないし、自分の上司に怒られなくてすむという安堵かもしれません)。うまくいけば、では次回もぜひお願いしますということで次の仕事につながっていきます。

「快感」という言葉をキーワードとして考えれば、仕事の上で自分が何をやれば良いのかが自ずとわかってきます。サラリーマン社会では上司にゴマをすって口先だけで出世した嫌なヤツというのがよく出てきますが、会社の中では上司はいわば自分のクライアントにあたるわけで、そのクライアントが快感を得るという意味では、ゴマをするという行為は立派な仕事と言えます(CGの世界ではいくら口がうまくてもアウトプットされる作品がしょぼければ話になりませんから、あまりこういった人はいませんが)。

CG制作を仕事としていく上で、まず物づくり、映像制作が好きであるということは重要ですが、それだけでやっていくことは困難です。なぜなら自分が好きなものだけを作れるわけではありませんし、十分な制作期間を与えられることは少ないので、純粋に物を作ることを楽しみたい人は、どんどんストレスやフラストレーションが溜まってきます。プロとしてやっていくには、物づくり以上にクライアントとのやり取り、つまり現状の条件内で、どうすればクライアントに快感を与えられるか? そういったことを考えるのが楽しめるようにならなければなりません。時に自分が損をしてでもやっておいたほうが良いこともあります。「損して得を取る」という言葉がありますよね。短期的には自分にとって損かもしれないけれど、長期で見れば大きな利益となって帰ってくる。仕事をしていればこういうことも必要になってきます。

CG制作をサービス業と思えるか思えないか、そこにこの業界でうまくやっていけるかいけないかの鍵があると思います。

|
|

« 秋晴れ | トップページ | 移り変わり »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事