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2011年8月15日 (月)

パッチワーク状の宇宙

久しぶりに宇宙論の話を。

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ちょっと前の記事で、アメリカの物理学者ブライアン・グリーンの新著を読んでいると書きました。「隠れていた宇宙」という本です。読書の時間が電車に乗っているときか昼食を食べているときくらいなので、まだ上巻の3分の1くらいまでしか読んでいませんが、大雑把に言うと我々が住んでいるこの宇宙以外の宇宙の存在についての本です。いま、理論物理学者の間では、宇宙は我々が住んでいるこの宇宙ひとつだけではないという説が広く支持されています。宇宙は、その誕生の際に「インフレーション」と呼ばれる現象で一瞬の間に爆発的に巨大化したとされ、この「インフレーション宇宙論」と呼ばれる理論は宇宙マイクロ波背景放射などの観測から正しさが裏づけられています。インフレーションは「インフラトン場」と呼ばれるものが引き起こすとされていますが、その理論からは無数のたくさんの宇宙がいたるところで生まれることを示唆しています。

それとは別に、グリーン氏は、本の序盤の部分で「パッチワーク宇宙」という面白いことを書いています。現在、物理学者の間では宇宙の大きさは無限だと考える人が多いそうです。ときどき宇宙の大きさは約137億光年であると書かれていることがありますが、これはあくまで我々が地球から観測できる範囲のことで、宇宙そのものの大きさは、宇宙の膨張速度と全エネルギーの量からすると、どうやら無限であるだろうと。それに対して物質-つまり素粒子の種類とその状態(スピードと位置)は有限です。まだ未発見の素粒子があるとしても、無限の種類があるとは考えにくいですし、素粒子のスピードと位置は一見無限にとることができそうに思えますが、不確定性原理から有限であることが導かれます。するとどうなるか? もしくは宇宙は無限ではないとしても非常に広大であり、人にとっては無限とも思えるほど広大な空間に有限の状態しかとれない素粒子がある場合、どうなるか?

グリーン氏はこれをおしゃれな女性のワードローブに例えます。服が大好きで、膨大な数の洋服をもっていれば、シャツ、スカート、ズボン、上着など、その組み合わせ方も膨大になります。ただ、いくら膨大とはいっても無限ではないので、毎日異なるコーディネートで出かけていれば、いつかは以前に組み合わせたことのあるコーディネートで出かける日がきます。つまり、素粒子の状態も有限である以上、無限の宇宙の中ではどこか遠いところで同じパターンが出てこざるを得ないということです。宇宙にある全物質―銀河、恒星、地球、人類、そして我々一人ひとりの思考や行動もそれらを構成する素粒子の状態で決まります。ということは、我々が知っている範囲の宇宙とそっくり同じもの(人間一人ひとり、虫一匹一匹までもが全て同じ)が、無限の宇宙の中のどこかに存在することになります。

CGをやっている人は、マッピングの作業の際にこれと同じ問題に突き当たるのでわかりやすいかもしれません。下のような100x100ピクセルのランダムな画像があったとします。これをテクスチャとして物体に貼りつける場合、すごく小さな領域に貼るとしたらこれで十分かもしれません。

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しかしマッピングしなければならない領域が下のように広い場合、模様の密度を変えてはいけないとすると1回のマッピングではカバーできません。

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全域をカバーするにはマッピングの回数を増やして、同じ模様を繰り返して貼るしかありません。

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宇宙もこれと同じで、つまりこれが「パッチワーク宇宙」と呼ぶ所以です。

もちろん宇宙に存在する素粒子の数や状態は文字通り天文学的な数で、そう簡単には同じパターンは出てきません。計算によると、我々が観測できる宇宙の範囲で素粒子がとれる状態の組み合わせは約10の10乗の122乗(1のあとに0が10の122乗個つく!!)となり、直径およそ10の10乗の122乗メートルの空間領域内に1つずつ、我々が観測できるこの宇宙とそっくり同じな宇宙(その宇宙では、今の僕と同じようにこのブログを書いている僕がいるわけです)が存在するはずだと述べています。

この考えはすごく興味深いです。インフラトン場によってたくさんの宇宙が生まれるとか、量子状態の重ね合わせによる多世界解釈だとかに比べると、感覚的に理解しやすいというか、頭の中で想像しやすいですし、そんな考え方もあったんだと目からウロコが落ちるような思いです。

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