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2011年8月10日 (水)

新人には不遇の時代

うちの会社でもときどき新卒の採用をするのですが、自分が就職した約20年前と比べると、今の新卒の子は色々な面で大変だなと思います。「不遇」と言ってもいいくらいです。CGに限ったことではないでしょうが、今は全てに置いて「スピード」が求められます。物事のサイクルがどんどん短くなり、ひとつのことにじっくり時間をかけて取り組むことが困難になりました。その道で何年も仕事をしていれば、今までの経験をもとに迅速な対応もできるでしょうが、何の引き出しもない新人をいきなり急流の中に放り込んでも、よほどのツワモノでない限り溺れてしまうのが普通です。

昔は今ほど仕事にスピードを要求されなかったので(当時のコンピュータの演算能力が低かったからということもありますが)、僕のようにこの業界に入るまではコンピュータを触ったことすらなかった人間でも、仕事で使えるようになるまで辛抱強く育ててもらえる環境がありました。しかし今ではそれがない。特にCMの仕事はそうで、映画やゲームはまだ多少はスケジュールを長くとれるものの、ショット数が多いので、1ショットにかけられる時間は思ったほど長くはありません。したがって、いったんこの業界に踏み入れば、その日からバンバン仕事をこなしていくスキルを、どこの会社でも求めるようになりました。ILMやWETAが「新人募集します。未経験者歓迎!」なんて言ってるのを見たことないですよね。

スピードが優先されると、とにかく短い時間でてっとり早くそれっぽいモノをでっち上げる仕事が多くなり、新人君に対しても「なぜそうすることが良いのか」「どういう根拠からこのようなことをやるのか」という部分を語ることなく、「とにかくそうすればそれっぽく見えるから」といった、いわば考えることをすっ飛ばして応用問題の解答を教えるような指示を出さざるを得なくなってしまいます。当然こんなことばかりやっていると基礎力が身につかず、自分ひとりで問題を解決する能力を養うこともできません。うちの会社では、新人にはできるだけスケジュールに余裕のある仕事をやってもらうようにしてはいますが、いつもそれができるとは限りません。

やっつけ仕事ばかりやっていると、自分の真の実力というものをいつまでたっても知ることができません。それを知るには、1度でもいいから、時間をかけてひとつのことにとことん取り組んでみるというのが一番です。デッサンでもCGでも、やはり制作に時間をかければかけるだけ良いものができます。が、では無限に時間をかければとてつもなくスゴイものができるかというとそうではありません。どこかの時点でクォリティが頭打ちになります。これ以上時間をかけても自分には良くすることはできないと、ちょっとした挫折を味わうときがやってきます。そこが自分の能力の限界なわけです。そこを知って初めて、自分にできること、そして勉強すべきことがわかってきます。また、十分な時間をかけて悔いのないクォリティを出せたことが、仕事に対する自信につながります。しかし現在の仕事においては、そのような時間を持つことは困難です。

そういった意味で、今は就職前の教育機関の役割が非常に重要だと思うわけです。大学や専門学校だけでなく、その前の高校のありかたも含めて。現在の就職難が、僕が言っているようなことにある程度起因しているのであればなおさらですね。大学3年になってどんな職業につこうかなどと考えはじめる時点で、今の時代ではもうダメなのでしょう。

自宅の花壇に来たシジミチョウと、ベランダの朝顔。

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