CGのこと

デッサンについて

前に「CGを作ること」と「絵を描くこと」は全く別物だと書きました。しかしながら、レベルの高いCGを作るためには、それなりのデッサン力が必要となります。絵が下手な人が良い形のフィギュアを作れないのと一緒で、CGと言えどもコンピュータの仮想空間上に何かしらの形状を作り上げていくのは人間自身なので、その人に物の形状の良し悪しを正確に判断する能力がなければ、いくら高価なソフトを使っても良いCGは作ることができません。またCGソフトのレンダリング機能は、計算速度を速めるために光のシミュレーションの式をだいぶ端折っているのが普通ですから、実物そっくりのフォトリアルな画像を作るには、実世界の光がどういう振る舞いをするかを理解して、CGソフトで不足している分を自分で補わなければなりません。そのためにはデッサン力が必要なのです。

したがって、絵が下手でも「CGだったらコンピュータを使うので、自分でもすごいのが作れるかもしれない」という期待を持ってCGを始める人も多いと思われますが、ソフトを使い始めて1時間で現実の厳しさを思い知らされるでしょう。結局コンピュータは操作する人が命令したとおりにしか動かないので、もともと造形センスの無い人がお門違いの命令を入力して良いものができることはありません。

それではデッサン力を身につけるにはどうすればよいか? 実はデッサンというのは独学することが非常に難しく、よほどの天才でない限りは、きちんとした先生のもとで少なくとも数年は学ばないと、まず身につかないと思っていいでしょう。芸術大学や美術大学といった類の大学がありますが、そこの出身者は基本的なデッサン力は身についているので、そうでない人とくらべて、明らかに仕事での成長のしかたが早いです。

意外に思われるかもしれませんが、美術大学では学校の授業でデッサンを描くことはほとんどありません。デッサンの授業そのものは、たぶん4年間で1、2回くらいしかないと思います。ではどこでデッサンを学ぶかというと、大学に入る前の予備校で学ぶんですね。トップクラスの美術大学に入るには、美大進学専門の予備校に数年間通うのが普通です。自分は人に比べてちょっと絵がうまいと思って、なんの準備もなくいきなり受験しても、合格することは99%ありません。予備校に2~3年通って合格するというのが普通です。僕も高校2年のときから通い始めて、一浪していますから、計3年通ったことになります。結局その間に数百枚はデッサンを描くことになります。

デッサンと言うと、「絵の描き方」というふうに捉える人が多いと思いますが、実際は「どうやって描くか」ではなく「どのように物を見るか」なのです。ですから、ここはこのように鉛筆を走らせて描くとか、このように色をつけていくといった技法的なことはあまり意味がありません。デッサンとは技術ではなく「物の見方の訓練」であり、だからこそツールがコンピュータに置き換わってもその力が生きてくるわけですが、この辺は書き始めると長くなるので、また別の機会にします。

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CGについての一般の方の認識

CGが当たり前のように使われているCM業界でも、CGがどのように作られているか知らない人は多いです。と言うか、ちゃんと知っている人のほうが少ないかもしれません。意外と多いのが、筆で絵を描くようにCGを制作していると思っている人です。

AdobeのPhotoshopやIllustratorで描いた2Dの絵すらも「CG」と呼ぶのならば、まあ間違いではないのですが。映画やCMの制作においてCGと言えば、普通は3DのCGを指します。「何々をCGで作る」ではなく、「何々をCGで描く」と言う監督やプロデューサーが結構いるのも、絵を描くのと同じような感覚でCGの制作を認識しているからでしょう。

実際にやってみればわかるのですが、3DCGの制作は、絵を描くこととは全く別物です。絵を描くことと写真を撮ることが全く違うのと同じくらい別の物です。どちらかというとプラモデルを制作するのと感覚的には似ています。それも、市販のキットの組み立てではなく、ゼロからフルスクラッチビルドする感じです。

だから制作期間も、概ねそれを実物の模型で作るのと同じくらいの時間がかかります。接着剤や塗装が乾く時間を待たなくてもいいぶん、CGのほうが少し早いかもしれません。

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